京都伝統文化の森プロジェクト

お知らせ

2010年11月03日 セミナー

公開シンポジウム「森が育む生物多様性」を開催しました。

生物多様性条約COP10記念学術交流事業として,平成22年11月3日(水・祝),京都府立大学で公開シンポジウム「森が育む生物多様性」を開催され,約80名の方々が参加されました。

まず始めに,第1部で「欧米での取組み事例」として,ラヴァル大学のエリオット・マッキンタイアー教授が「生物多様性の価値の再構築 ~種の再生・保護区・地域の支援~」という内容で御講演されました。その中で,カナダのケベック州での環境教育を取りこんだ保護区の管理に関する種の再生プログラムの成功事例や,蝶やオオカミ等のカリスマ的な希少種に対するアメリカやヨーロッパの取組みの成功事例を紹介されました。

そして,第2部では「京都三山の森の多様性」という内容で,京都府立大学の高原光先生,平山貴美子先生,京都大学の竹内祐子先生,森林再生支援センターの高田研一先生が御講演されました。

 

田中和博先生からの開会のあいさつ
田中和博先生からの開会のあいさつ

エリオット・マッキンタイアー教授の御講演の様子
第1部 「欧米での取組事例」
エリオット・マッキンタイアー教授の
御講演の様子

 

高原光先生からは,「京都三山の森の移り変わり ~照葉樹林からマツ林,シイ林,そして・・」という内容で,深泥池堆積物の花粉便分析によって解明された京都盆地の森の移り変わりを通して,今後の森林保全をどのように考えるのかという内容の問題提起がなされました。

次に平山貴美子先生からは,「シイ林化による森の多様性の変化 ~宝ケ池丘陵・林地での調査から~」という内容で,シイの分布拡大のメカニズムについて具体的に説明され,落葉広葉樹林とシイ林の木本種の構成比から,シイ林化が木本種の多様性の維持にとってどのような影響を及ぼすのかという内容で御講演をされました。

京都大学の竹内祐子先生は,東山(ブナ科樹木の単純林)と宝ケ池(混交林)においての2年間に渡る調査により,土壌中の菌根菌の多様性の違いについて御講演されました。

最後に高田研一先生からは,森林立地の基本事項と,それを踏まえ,現在,猛威を奮っているナラ枯れの跡地やシカの食害対策において森林をどのように回復していくべきかという内容について御講演されました。

非常に短い時間の中で,密度の濃い内容であったため,参加者の皆さんにとっても貴重な時間となったとことと思います。

協議会では,東山だけではなく京都全体で起こっている森の移り変わりや,人と森林との関わりの中で生じる生物多様性について,専門家だけではなく一般の人にも広く知ってもらうことにより,人(=自分)と森との関わりを見つめなおす良い機会になればと考えています。今後も,このような取組みを継続的に行っていきたいと考えています。

 

京都府立大学 高原光先生
京都府立大学 高原光先生

京都府立大学 平山貴美子先生
京都府立大学 平山貴美子先生

 

京都大学 竹内祐子先生

京都大学 竹内祐子先生

森林再生支援センター 高田研一先生
森林再生支援センター 高田研一先生

 

シンポジウムで講演を聞く参加者の様子