清水寺から高台寺(10月)

□ 林相改善事業について

林相改善とは,森林の多面的機能(生物多様性の保全,土砂災害の防止,水源のかん養,保健休養の場など)を高めるため,森を形づくる樹木の構成を伐採や植栽によって改良することです。

京都伝統文化の森推進協議会(以下,協議会)では,京都市東山区の高台寺山国有林において,京都に根付いた自然と共生する本来の日本の伝統文化を全国にそして世界に発信するべく,平成19年度から市民の皆さまの協力を得て,林相改善事業を行っています。

林相改善の実施にあたっては,協議会の森林整備・景観対策専門委員会において検討を行いながら進め,実施後はモニタリング調査によって,その効果を検証しています。

目的と概要

東山では,かつてアカマツを中心にコバノミツバツツジなどの花が色づき,四季折々の彩りを見せていましたが,現在ではシイ林が拡大した,単調な森林植生へと変貌しています。
そこで,立地条件や目的などに応じた様々な林相改善事業を行っています。

例えば,
@ 単調な森林構造のシイ林を景観的に美しく山崩れなどにも強い森林へ
高木から低木までが混在し,さまざまな林齢や樹種の木で構成される多様なシイ林を目指して,増えすぎたシイを抜き切りし,そこにヤマザクラやオオモミジなどの苗木を立地条件に応じて植栽しています。これにより,単調な森林構造のシイ林を景観的に美しく,山崩れなどにも強い森林へと変えていきます。また,広範囲に根系を展開するシイ大径木については,伐採で一気に根系が枯死して斜面が崩壊しないよう,場所によっては大枝を剪定し,林内に光が入るようにするなどの配慮をしています。

A ヒノキ林における枯死木等を除去
ヒノキ生育適地において放置状態にあったヒノキ林については,枯死・劣勢木等を除去することにより,健全なヒノキの生長を促します。
また,林内に紅葉の美しいイロハモミジやウリカエデなどの亜高木性・低木性の落葉広葉樹を植栽し,天然ヒノキ林のようにヒノキと落葉広葉樹が混交する林分を目指します。

B 森林快適性の向上や歩きやすい安全な散策道を目指して
来訪者頻度の高い山頂部付近において,見通しを遮る常緑広葉樹低木類の除伐をすることで,森林快適性の向上,景観の改善を目指します。
また,東山一周トレイルコース(東海自然歩道)などの散策道沿いにおいても,見通しを遮る常緑広葉樹低木類を除伐することで,歩きやすく安全な散策道を目指します。

施業箇所

現在,協議会では,協議会と林野庁近畿中国森林管理局との間で締結されている国有林整備事業「伝統文化の森」指定区域に基づき,東山・高台寺国有林内を7つの地区に区分し,さらに施業を行った箇所に施業区名をつけて整理をしています。
これまでの施業箇所は下図の通りです。


図をクリックすると拡大します(PDF版)。図中の番号は施業区名。

施業内容

施業区ごとの主な施業内容は以下になります。さらに詳細な施業内容については,こちら(PDF版)をご覧ください。

施業のうち亜高木・低木層の除伐等の一部については,協議会協力団体等のボランティアの皆様と一緒に行っています。
 ※ 除伐活動等に興味がある方は協議会までお問い合わせください。

         
 施業
年度
 地区名 施業
区名
施業内容   面積
(u)
 
 H19 清水寺 0803-A 萌芽再生した常緑広葉樹の除伐 1,000  一部,市民参加で実施
 H20 清水寺 0903-A シイ5本伐採
イロハモミジ等5種29本植栽 
400  
0903-B シイ3本伐採,ヒノキ劣勢木間伐,低木除伐
アカガシ等6種40本植栽
400  
0903-C  ヒノキ劣勢木間伐,常緑広葉樹除伐,ウラジロ除去 400  
 H21 清水寺 1003-A  シイ6本伐採,ツクバネガシ等6種38本植栽,翌年度2種12本補植 400  
1003-B クロバイ11本除伐 400  
1003-C ヒノキ劣勢木間伐,常緑広葉樹の除伐 900 一部,市民参加で実施 
東本願寺 1003
-高台寺 
シイ等4本伐採,イロハモミジ等3種18本植栽 160  
 H22 高台寺
・正法寺
1103-A シイ29本伐採,常緑広葉樹の除伐,アカガシ等20種148本植栽 2,000
清水寺 1103-B ヒノキ劣勢木間伐,常緑広葉樹の除伐,ザイフリボク等6種67本植栽 1,800 一部,市民参加で実施 
 H23 高台寺
・正法寺
1203-A シイ5本,クスノキ1本伐採,常緑低木・下層植生の除伐
アカシデ等13種210本植栽(1103-Aの補植含む)
2,800  
1203-C シイ10本伐採,常緑低木・下層植生の除伐,ウラジロ除去 900
清水寺 1203-B シイ切株等への萌芽抑制措置 300  
1203-D 常緑亜高木・中低木の除伐
イロハモミジ等8種75本植栽
400  
1203-E ヒノキ4本除伐,常緑中低木の除伐,ウラジロ除去,コバノミツバツツジ等3種30本植栽 150
1203-F ヒノキ6本除伐,常緑亜高木・低木の除伐
ナツハゼ等4種23本植栽
200 一部,市民参加で実施 
 H24  将軍塚 1303-A シイ31本,ヒノキ2本の伐採,常緑中低木・下層植生の除伐
オオモミジ等6種42本植栽
2,000  
高台寺
・正法寺
1303-B シイ7本伐採,常緑中低木・下層植生の除伐
ガマズミ等10種76本植栽
(1203-Aの補植含む)
800  
清水寺  1303-C シイ8本,ヒノキ19本伐採,常緑中低木・下層植生の除伐,萌芽除伐
オオモミジ等12種115本植栽
2,400  
 H25 将軍塚 1403-A シイ11本伐採,常緑亜高木・中低木・下層植生の除伐
ヒノキ等8種96本植栽
1,900  
清水寺  1403-B シイ7本伐採,ヒノキの劣勢木間伐,常緑中低木・下層植生の除伐 1,500  
1403-C シイ5本伐採,常緑亜高木・中低木・下層植生の除伐
オオモミジ等2種9本植栽
2,000  
1403-D-1 シイ等萌芽株の除伐 800  
1403-D-2 シイ等萌芽株の除伐
(高木になった82本含む)
1,600  
1403-D-3  シイ等萌芽株の除伐 400  
 H26 知恩院  1404 散策道沿いの常緑中低木除伐 500 市民参加で実施
青蓮院 1410 散策道沿いの常緑中低木除伐 600 市民参加で実施
将軍塚  1503-B シイ9本伐採
市街地からの遮蔽として伐開地に大苗4種12本植栽
1,800  
高台寺
・正法寺
1503-C シイ6本伐採,常緑亜高木・中低木・下層植生の除伐 2,800  
清水寺 1503-D シイ7本伐採,常緑亜高木・中低木の除伐,萌芽の除伐,ウラジロ除去 3,000  
1503-E シイ7本伐採,ヒノキの劣勢木間伐,常緑中低木の除伐 2,900 一部,市民参加で実施
 H27 将軍塚 1505 散策道沿いの常緑中低木除伐 1,000 市民参加で実施
1603-B シイ11本伐採,ヒノキの劣勢木間伐,常緑亜高木・中低木の除伐,イロハモミジ等3種12本植栽 2,400  
高台寺
・正法寺
1603-C シイ29本伐採  
清水寺 1603-D シイ6本,クロバイ1本伐採
ヤマザクラ等4種40本植栽
 
1603-E 常緑亜高木・中低木の除伐  
 H28  清水寺 1606 散策道沿いの常緑中低木除伐 2,000 市民参加で実施
将軍塚 1606 散策道沿いの常緑中低木除伐 2,000 市民参加で実施 

その他,平成26年度に危険が少なく景色を見ながら歩ける新しい散策道の敷設(粟田口〜将軍塚間)を行いました。

<植栽について>
苗木は「地域性苗木」の3〜4年生(樹高0.5〜1.0m内外)ポット苗を用いています。基本的には2〜3本の巣植えで,菌害を受けないよう植栽箇所を芯土(=下層土)まで掘り下げて植えます。遷移後期まで残存させたい高木性樹種や,急斜面地等で斜面安定性を高めたい場合などは,時間が経つと分解する自然素材の植栽柵を使って植栽することもあります。配植位置は,斜面方位,斜度,微地形,土質,日照条件,周辺樹木の位置関係等から,樹種ごとに適地を決めています。